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エピジェネティクス

こんばんは。獣医師の田中利幸です。

今回は、今は臨床で使えないけれど、今後広まっていくであろうエピジェネティックスについて書きます。まったく臨床の話にはならないマニアックな話です。すいません。

の治療といえば、手術、抗がん剤、放射線治療、(免疫療法)がメインと考えられています。その中で抗がん剤は全身投与することで、細胞だけではなく正常な細胞も傷つけてしまい、副作用がたくさん出てきます。

最近は特定のに見られる遺伝子異常に注目して、その遺伝子異常のある細胞だけを攻撃する薬(分子標的薬)が獣医療でも使われるようになってきています。肥満細胞腫というのc-kitという遺伝子に異常があれば、その分子標的薬が効くとされています。ただし、この薬はかなり高いです。そのため、処方には十分気をつけないといけないと個人的に考えています。

このようにには、遺伝子異常が関係している場合が多いと考えられていました。すなわち、細胞では遺伝子に異常があるから、遺伝子異常のある遺伝子の機能がなくなっているというように考えられてきました。

ただ、最近は遺伝子異常がなくても、特定の遺伝子の機能がなくなっていることがあると報告されています。これは、エピジェネティックな変化が起こっていると表現されます。

エピジェネティックな変化がある場合、DNAメチル化やヒストン脱アセチル化を阻害する事でその遺伝子の機能を元にもどすことができるかもしれないのです。これは結構すごい事で、今までどうすることもできなかったものが、薬で正常な状態に戻せるということです。これによって、効かなかった抗がん剤が効くようになったり、免疫療法も効くようになったりということが期待されます。

ただ、これはまだまだ分かっていない事が多くて、臨床応用はまだまだ先の事だと思います。獣医療でも更に先の話になります。こういう発展途上の事を知ったりするとすごく楽しいです。興味ある方は、「エピジェネティックス」を調べてみて下さい。

そういえば、獣医学はサイエンス(科学)なんだと学生の頃に教えられました。当時はなんのこっちゃ?と思いましたが、臨床を通じて自分なりに考えた結果、今はよく分かります。サイエンスしていないと、診断も治療もぶれてよくわからないことになるし、他人に自信を持って説明できないんですよね。

次はもうちょっと身近な内容を考えてみます。宜しくお願いします。

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インターベンショナルラジオロジー

こんばんは。獣医師の田中利幸です。

ちょっとブログを書く手が止まっていましたが、書く内容が思いついたので再開です。

今回は、インターベンショナルラジオロジー(IVR)について、です。最近では、獣医麻酔外科学会でも腫瘍に対するIVRの講演特集が組まれていたり、注目ポイントアップ中です。

IVRは簡単に言えば、カテーテル手術です。動脈からカテーテルを入れて、に栄養を送る血管を塞栓したり、局所に抗がん剤を送り込んだりできます。僕も何例か経験したことがあるのですが、体内の血管解剖が分からないと、どこの動脈にカテーテルを入れていいのかわかりません。外科手術とはまた違う知識が必要になってきます。

このIVRは獣医療において、色々な可能性を持っていて、活用できれば今まで何もできなかった症例も治せる可能性がでてきそうです。ただ、DSA機能付きの透視装置の値段が高くて、個人病院での普及はあまりしないと思われます。

今のところ、動物で適応で、ある程度治療成績が分かっているのが、手術不適応の肝細胞です。

動物、特に犬の場合、肝細胞は孤立性(1個だけ大きな腫瘍ができる)が主で、大体はかなり大きくなって見つかります。ウイルスが関連している報告はありません。第一選択は外科手術になります。ちなみにヒトはウイルス感染に起因する肝硬変に肝細胞が合併しており、肝細胞は多中心型(たくさん腫瘍ができる)が多いようです。治療もPEITや区域塞栓術、TAEなど治療の選択肢も幅広いようです。

結構、病気の発生機序が違うものが多いので、ヒト医療の第一選択が、動物医療の第一選択とちがうことも多いのです。ただ、犬においてもヒトと同様に肝細胞は、肝動脈からほとんどの栄養を受けているので、IVRの治療効果も出ると思われます。

そのため、犬の肝細胞癌に関しては、手術適応外であれば、IVRを考えてもいいかもしれません。

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病院での検査

こんにちは。獣医師の田中利幸です。

皆さん、病院に行ったときにいろいろ検査することがあると思います。

獣医師はどういうときに検査して、検査しないのか?その判断はどうしているのか?不思議に思ったことはあると思います。今回はその事について書いていこうと思います。ただし、僕個人の話なので、他の獣医師はどうしているのか分からないです。また、客観性を出すため統計の話を絡めるので少しややこしいです。
同時に、僕の個人的な見解も入っています。ご了承ください。

それぞれの患者様に対して、検査するのか、治療するのか判断することを臨床決断と言います。その中の診断をつけることは疾患確率(その病気に罹っている確率)を高める行為です。ちなみにどんな検査をしても100%確実な診断は難しいです。そのため、できるだけ確率を100%に近づけることが大切です。正しい診断は、患者様が得られるベネフィット(ここでは、正しい診断に基づく治療効果)を最大にしてくれるのでかなり重要です。

では、ある病気を疑っているとき、ある検査を行なうかどうかの判断について、どう考えているのか?
ある程度は問診と身体検査でいくつかの病気を疑えます。検査するかは、その時点での特定の病気の疾患確率を考えて判断します。
ここで、検査閾値と治療閾値という考え方が出てきます。

検査閾値:検査をしないで治療もしないことの価値と検査をすることの価値が同じになる疾患確率
治療閾値:検査をしないで治療する価値と検査する価値が同じになる疾患確率

ちなみに検査閾値と治療閾値は、状況によって値は異なります。

同時に、個々の検査法の検査能も考えます。検査能はその検査の病気に対する感度(その病気を検出できる確率)と特異度(その病気だけで陽性になる確率)が問題になります。ちなみに検出感度は個々の獣医師の習熟度で変わると思います。当然、習熟度が上がれば、病気に対する検出感度も上がり、早い時点で診断がつき、検査数も絞れるかもしれません。

ちなみに感度が低いと、感度をあげるために他の検査で確認しないといけなくなります。そのため、その検査のもっている最大限の感度を引き出すことが重要です。このことから、獣医師は検出感度を上げるため、常に勉強しないといけません。

結構勘違いされている方も多いのですが、個々の検査で100%診断できるものでもなく、色々な検査結果を総合的に判断して診断していきます。レントゲン検査ひとつで全部の病気が分かるわけでもありません。レントゲン検査で異常がなくても、病気が隠れていることもあります。

また、その検査を行なうかは、検査能以外に、検査に対するリスク、検査を行なうことで起こる後遺症、コストも考えて判断します。

例えば、前日まで元気だったのに急に吐き出した場合、胃薬で様子をみるのか、あるいは血液検査やレントゲン検査、エコー検査、CT検査・・・までするのか?

問診、身体検査である程度病気を絞り込んでいきます。ある病気の疾患確率が低ければ、胃薬で様子をみたり。それでも、良くならなかったら検査するかどうか判断したり・・。疾患確率が高そうであれば、飼い主様の意向と上記のことを考えて、始めから検査するかどうか判断します。検査を重ねて、鑑別していき、疾患確率の高い病気にたどり着きます。

要は、問診、身体検査、治療に対する反応で疾患確率を見極めて、検査するかどうか判断しています。この見極めにはやはり臨床経験がモノをいうと思っています。経験がない時は、知識が経験不足をカバーできると思っていましたが、飼い主様のコストの負担を考えると、経験は重要です。

最後に検査する数に影響を与える要素として、以下の3つが関係していると個人的に考えています。
1)検査の感度=検査に対する個人の習熟度(特にエコー検査とか人によって感度は違います)
2)特定の病気を疑えるだけの知識・勉強量
3)経験=疾患確率の見極めに重要

上の3項目によって検査する数は変わると思います。

文章長いなあ・・。もうちょっと上手くまとめれる文章力が欲しいです。

一塩基多型ってなんですか?

こんばんは。獣医師の田中利幸です。

動物病院で臨床をやっていると、まず関わりがなさそうなことを今回は書いてしまいます。すごくマニアックです。ご了承ください。

最近、興味あることのひとつとして一塩基多型 (SNPs)です。これが調べてみると結構面白いんです。

2003年にヒトゲノム解読完了宣言がなされたのは記憶に新しいと思われます。ちょっとニュースになってましたよね。

時を同じくして(2003年、2005年)、ドラフトシークエンスではありますが、犬のゲノム解析も完了しました
(=標準的な塩基配列が分かりました)。

これらDNA解析には次世代シーケンサーが関わっています。このシーケンサーは機械本体も高いのですが、解析もとんでもなく高いのです。それでも、このシーケンサーはすごいという評判はよく聞きます。先日、新聞を読んでいると「1000ドルでヒトゲノムを解析できるシーケンサーが販売される」と書いてありました。今後はもっと安くなって身近なものになったらいいなと思っていました。それくらい、手が届かない代物です。

実際に遺伝子解析をしてみると、標準的な塩基配列と比較して、一塩基だけ異なる塩基配列に置き換わっていることがあります。これをSNPsといいます。

SNPsは遺伝的な個体差と関係している可能性があるとされています。SNPsを調べる事で、病気のかかりやすさ、薬の効きやすさ、副作用の出やすさ等の指標になる可能性があると言われています。

ただ、SNPsは一カ所だけではなく、DNA全域にわたって何カ所もあり、それらがどう関わっているか解析するのも大変です。安価な次世代シーケンサーの登場によりデータはさらに大量に出ると思いますが、今後はそのデータをいかに上手く解析するかが問題になりそうです。

現在、データベースにアクセスすれば犬においても、SNPsの情報が手軽に入手できるようになっています。ただ、データも少なく、どのSNPsがどの病気に関わっているのかあまり分かっていません。

このSNPsの解析、今後が気になる分野です。

以上です。マニアックで申し訳ありませんでした。

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エビデンスに基づいた医療とは

こんにちは。獣医師の田中です。

最近獣医療においても、エビデンスに基づいた医療(EBM)が注目されています。個々の動物病院でもそれを実践しているところもあるみたいです。

ウィキペディアによると、治療効果・副作用・予後の臨床結果に基づき医療を行うというもので、専門誌や学会で公表された過去の臨床結果や論文などを広く検索し、時には新たに臨床研究を行うことにより、なるべく客観的な疫学的観察や統計学による治療結果の比較に根拠を求めながら、患者とも共に方針を決めることを心がける、とされています。

ということは、研究デザイン、エビデンスレベル、疫学・統計手法の知識などの知識が必要になってくるのでしょう。

言ってみれば、EBMはこれらの知識を駆使して、数ある論文の中から自分で吟味をし、治療に活かしていくという医療ということでしょうか。上の定義に従えば、ある教科書に載っている治療をそのまましているからEBM、有名な先生の書いた本にしたがって治療しているからEBM、という事ではないと思います。論文を探すと、結果が正反対のものもあれば、ある治療に対する反応率、中央生存期間が個々の論文で異なってたり・・・、それらの中から自分で吟味をし、個々の動物に適応していくということがEBMと思います。

僕が調べた限りでは獣医学においては、そういう疫学・統計をきっちりしている論文は人医療と比較すると数が少ないと思われます。

臨床研究であれば、研究デザインでいえばメタアナリシスや大規模なRCT、統計手法では多変量解析の1つである比例ハザードモデルを用いた解析はなかなか見当たらないです。

これらの研究は費用がかかるという点、症例数がかなり必要である点が報告が少ない理由なのかなと勝手に解釈しています。

どうしても、医療は生物を扱っているだけに100%ということはないし、不確定要素も多いです。個々の病気に関してもすべて同じということはなく、獣医学においては明確なガイドラインも作成されていないので、症例の状態によっては獣医師毎に治療方法も変わってきたり、教科書に載っていないことも多く見られます。そういうとき、EBMを実践していれば自分の経験からではなく、論文から客観的に根拠のある治療法やアドバイスをすることができるようになるのでしょう。

とにかくEBMは臨床の知識だけではなく、統計、数学の知識も相当必要なので、かなり勉強が必要だと感じる今日この頃でした。
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大阪にある動物病院、堀江動物医療センターのブログです。

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